『話しをしている友達』
作:柳沢茂樹
ドラマトゥルク:朝比奈竜生
・この戯曲は、俳優がひとりで演じる
・舞台奥に椅子が二脚ある
・舞台上のどこかに人形が置いてある
・俳優は、その日出かけたそのままの格好で舞台に現れ、話し出す
シーン1、中学の頃の帰り道の話①
「えっと、
あぁ、えっと、
だから、そのぉ、
あぁ、
まぁ、山とか、丘って、ちょっと高いとこにあったんで、そこ、降りてきて
で、基本的に舗装されてるんですけど、麻布の、なんか、麻布の街中を歩いていって、
なんか、なに、話したんだろう、
当時、メタルギアソリッド2っていうのを流行ってて、やってたんですけど、
それで、でも、
本当に、僕、うぇーい、じゃないですけど、
なんか、なんか、友達と、ツッツキあってる、
ツッツキあった、っていうか、
僕、けっこう、体、でかいんで、
あの、たぶん、一撃が強かったと思うんですけど
あの、そういう、思い出が、
なんだろう。」
シーン2、語源の話
「語源の話なんですけど」
という風に話し始める。
話す内容は、以下の例のように、ある動詞についての出まかせの語源を、その場の思いつきで話す
例1
「走るって、橋、川にかかってる橋なんですけど、
橋の端を、るって、昔は流れる、って書いたんだけど、
その橋の横を流れるように進むことをはしる、って言って、
橋を流れるようにすって行くっていうのを、
当時は走ると言って
それが今、はしる、ってなっているんですよ」
例2
「渡す、って、ものを渡す、渡す、
って、今は、漢字も、ちゃんとあって、
さんずいに、度、って書いて、渡す、って読むんですけど、
もともとは、それにも語源があって、
その、渡す、本当は、私、って言葉なんです、語源は。
私、って言葉が、自分が、自分が、生まれ育って、生きて、
生まれ育ったところに、私が、渡す、魂が新しいものに、ちゃんと渡される、
私が、私に、移る、っていうので、
そういう、すごい、なんか、壮大な、あれがあって、
語源で、僕は、すごい好きなんですけど。」
観客を指名し、語源を知りたい動詞はないか尋ね、その語源を出まかせで答える
何度か繰り返す
シーン3、人形と話す
客席にいる知人を選び(知人がいない場合、観客の中から無作為に選び)、舞台のどこかにある人形をその人として、その人の悩みや考えていることを想像し、そのことについて人形と会話をする
人形の言葉も俳優が発する
会話の終わり、人形と俳優は以下のやりとりをする
人形がMike、俳優がJungle Julia
(以下、映画『デスプルーフ』からの引用)
Mike:Ladies.
Cheers, butterfly.
The woods are lovely, dark and deep
and I have promises to keep,in miles to go, before I sleep.
Did you hear me, butterfly?
Miles to go, before you’ll sleep.
Jungle Julia:Sorry, stantman Birt.
Mike:Mike.
Jungle Julia:Mike. She’ve already broke off that dance.
Mike:Is that true?
(以上、引用)
シーン4、中学の頃の帰り道の話②
「帰り道に、中学校の時は、
その、自分の家は中学校から30分ぐらい、歩いたとこにあって、
で、わりと、畑とか田んぼの道をずっと、歩いていて、
まぁ、同じクラスの松井君は、
だいたい、15分くらい、中学校から、15分くらいに家があったんで、
まぁ、途中までは、松井君と、なんか、一緒に帰ってて、
で、何をはな、まぁ、で、それで、たまに松井君の家に寄って、
その、そう、お父さんが、なんか、クラシック音楽が好きで、
そのクラシックのなんか、CDの色んな全集みたいのがあって、
それを、なんか、松井君と聴いてて。
その、松井君と僕は、
その、そんなにクラシックとか、全然、詳しくはなかったんですけど、
なんか、なんとなく、二人で、ちょっと、
なんか、みん、なんか、みんなと違うことを僕たちはやってるみたいな、
ちょっと、共通、共通のなんか、気持ちもあって、
なんか、クラシックのこと、ちょっと、聞きながら、
調べたり、そういう、なんか、なんか、その、この人とこの人は、
なんか、昔、一緒に暮らして、その、作曲家として、
なんか、切磋琢磨してたんだよねぇ、とか、へぇ、そうなんだ、とか、
なんか、そういうことを松井君んちで、なんか、話してたっていう、
で、なんか、その帰り道、そういうことをしてましたね。」
最後の言葉に被るように、音楽(The Coasters『Down in Mexico』)が流れ始める
シーン5、ラップダンスをする
音楽(The Coasters『Down in Mexico』)が流れている
舞台中央あたりに、椅子一脚を移動する
映画『デスプルーフ』のラップダンスのシーンを思い出しながら、踊る
映画と同じタイミング(2分47秒)で音楽カットアウト、暗転
終わり
(2022年10月28,29日『ひとりで公演2020』にて初演)